契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話
翌朝は佐和もいつもより早く起きてきて、朝食は和食がいいと言いだした。
軽井沢でも佐和の希望で和食だったり洋食だったり日替わりだったから、いつもの調子が戻ってきたのだろう。
昨日あれこれと買い足していてよかったと思いつつ、香耶は卵焼きや味噌汁を作った。
食事を終えて満足したのか、佐和はお茶を飲みながらゆったりと過ごしている。
香耶が洗濯をしていたら、玄関のドアが開いた音がした。
どうやら拓翔が帰宅したようだ。
「お帰りなさいませ」
玄関まで香耶が迎えに出ると、拓翔は少し驚いた顔を見せた。
ふたりがいることを忘れていたのかもしれない。
「ああ」
それだけ言うと、洗面所で手洗いをしてリビングへすたすたと向かっていく。
そんな孫の様子を、老眼鏡をはずしながら佐和もじっと見ていた。
「お帰りなさい。ずいぶん疲れた顔をしているわ」
「急患が相次いだもので」
拓翔はだるそうだ。
よほど疲れているのか、佐和の向かい側のソファーにどっかりと腰をおろした。