契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話
入院した病室に様子を見に行ったら、祖母がブラックカードを古泉香耶に渡しているのが目に入った。
そこまで信頼しているのだろか、本当にただの看護師なのだろうかと疑問がわいた。
「とても彼女を信頼していらっしゃるんですね」
質問が少し皮肉っぽく聞こえたのか、祖母がフフフと笑っている。
「とっても優秀なのよ。今は私の看護師兼秘書といったところかしら」
「秘書ですか」
「この年になると書類仕事は面倒だし、小さな文字も見にくいの。彼女がいればすべて安心なのよ」
重要な書類を見せているのか思うと冷や汗がでた。
祖母は会社の株だってかなり持っているはずだし、業務関連のものならなおさらだ。
池辺製薬の情報を漏洩でもされたら、たまったもんじゃない。
「彼女の経歴や身上調査はなさったのですか」
「大丈夫。ちゃんと青葉大学医学部の看護学科を卒業していて、国家試験にもパスしているわ」
資格はともかく、身元について知りたかったのだが祖母にはぐらかされてしまった。
「どこで知り合ったんです」
「いやだ、拓翔って疑り深いのね」