契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話

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三人での暮らしは、拓翔が心配していたほど混乱はなかった。
生活のパターンが違うから顔を合わせることは少ないし、香耶は祖母のワンマンに慣れていて上手に対応しているからだろう。

同居は二、三日と思っていたのが、一週間になり、十日が過ぎていく。

祖母が騙されないように香耶を注視していたが、特に問題は起こらなかった。
高価な買い物をしているようでもないし、祖母にねだってあれこれ買わせているわけでもなさそうだ。

祖母の世話をする香耶を見ていたら、なんとなく性格まで垣間見える気がしてきた。

よく気がつくのか、クルクルと動き回っている。
それもバタバタした様子はなく、ゆったりと感じられるのだ。

おそらく彼女の話し方のせいだろう。
女性にしては少し低いかもしれないが、耳に心地よく響く声だから聞き取りやすい。
おっとりとしゃべるのだが、少ない言葉できちんと相手に伝わっている。
少し耳が遠い祖母とでも会話が続いているのがその証拠かもしれない。

暮らし始めて一番驚いたのは、思っていたよりも香耶が若いことだ。

相変わらず髪はひとつにまとめたままだし、サイズがあっていないようなだぶだぶの服装だ。
始めは中年かと思っていたが、かいま見える素顔はどうみても二十代半ばだ。
違和感を感じるが、わざとそんなふうにしているとしか思えない。