契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話



それからは帰宅時間を少し遅くした。
マンションの中のジムにでも寄れば、もっと避けられると考えたからだ。

ここは会員制だが、入居者は優先的にマシンが使えるのだ。
日中は予約が取れないくらいだが、拓翔が行くのは遅い時間だから比較的すいているので助かっている。

ロッカールームで着替えてから、なにをしようかとフロアを見渡した。
筋力を鍛えるマシンやベンチプレスもあれば、運動が苦手な人でも気軽に使えるエアロバイクもある。
どれを使おうかと迷っていたら、ランニングマシンで黙々と走っている女性が目にとまった。

体にピッタリとしたトップスからレギンスまですべて黒で統一している。
腰の細さが強調されて、余計に女らしいめりはりがわかる。
軽々としたフォームで息を切らしてもいないから、普段から鍛えているのだろう。

走るたびにポニーテールがリズミカルに揺れている。
楽しんでいるのかと思ったら、夜景の見えるガラス窓には真剣な表情がはっきり映っていた。

(あれは、古泉香耶だ)






< 49 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop