契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話
拓翔から見たら、香耶はどんなふうにその目に映っているのだろう。
「謝りたかった」
しばらく香耶が黙っていたら、拓翔から口を開いた。
「君を誤解していた。すまなかった」
「でも、謝られるなんてことはなにも……」
拓翔は青葉大学病院で会った日のことだと言う。
「てっきり年寄りを言いくるめているのかと思っていた」
「まさか」
「俺の誤解だった。祖母のために、いつもありがとう」
あらためて言われたら、誉められることに慣れていない香耶は顔が赤らんできた。
だが香耶は、麻友の失礼な態度こそ申し訳なく思っていた。
「あの、私もお礼を言いたかったんです。この前はありがとうございました」
レストランで麻友に絡まれたとき、拓翔がかばってくれたと香耶は思っている。
わざと親し気にしてくれたり、助手席に乗せたりしてくれたのだ。
「おかげさまで助かりました」
「義妹は言いたい放題だったな。あれじゃあ言い返す気にもならないだろう」
拓翔は短い会話から、麻友との関係を理解してくれたようだ。