契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話


「先生、夜勤明けですか」
「これから帰るところだ」

香耶と佐原が並んで立っているのを見て少し眉をしかめたかと思うと、すぐにピッタリ香耶のそばに立つ。
ちょうど端に香耶を、反対に佐原をストレッチャーごと押しやった形だ。

「もうお昼ですよ。昨夜は忙しかったんでしょう」
「ああ。クタクタだよ」

「あらためて見ると似合ってるな、そのスクラブ」

香耶は最近取り入れたばかりの、アニメのキャラクタープリントされているピンクのスクラブ。
佐原は似ていると言われている丸顔のキャラクターが、前面いっぱいに描かれているエプロンを付けている。
そんな小児科らしいかわいい制服が目についたようだ。

「このキャラクター、子どもたちから人気があるんです」

「いつもと印象が違って見えるよ」

そして「かわいい」と、香耶にだけ聞こえるように小さな声で付け足した。
医局の階でエレベーターが止まった。

「じゃあ、お疲れ」
「お疲れさまでした」

そう言って、拓翔が先に下りていく。



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