契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話
気持ちを伝えあってからも、忙しいふたりはゆっくり話す時間もとれない。
梅雨に入ったこともあって、デートに出かけるよりも、拓翔のマンションで過ごすことの方が多いくらいだ。
そもそも拓翔は休みの日でも論文を書いたり、担当している患者の症例を研究をしたりする。
少しでもリフレッシュして欲しくて、香耶も雨の中、無理してまで遠出したいとは思わない。
香耶の手料理を味わった午後、雨が上がったら近くの公園からレインボーブリッジの夕暮れの景色を眺めたりするだけでも十分だ。
拓翔は抱きしめられたときに避けてしまった香耶に気を使ってくれて、いきなり触れてくることはしない。
散歩のときに手をつなぐくらいだが、それがうれしくもあり申し訳なくもあった。
しかも、せっかくふたりの距離が縮まってきたのに、拓翔がピンチヒッターとして急遽アメリカに出張することが決まった。
教授のお供をするらしいが、こればかりは医師として望まれていくのだから避けられない。
医師としての将来のために、とても大切なことなのだ。
「三カ月も」
理屈ではわかっていても、香耶は寂しい。
帰国する頃には夏が終わっているだろう。
「すぐに帰ってくるよ」