契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話
気持ちより熱いのは
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古泉香耶は不思議な女性だ。
初めは彼女に対して、いい印象を持てなかった。
看護師とはいうが、地味に装いながらも祖母の懐にするりと入り込んだ、狡猾な女性に思えたからだ。
祖母から平然とブラックカードを受け取っている様子を見て、これは警戒した方がいいと考えた。
俺のマンションに祖母と彼女が住むのを許可したのも、彼女の動向を監視する意味もあったのだ。
だがすぐに間違いではないかと思うようになった。
いや、気がついたが自分の誤りだと認めたくなかった。
祖母のためといながら、彼女にひかれていく自分を素直に受け入れられなかっただけだ。
彼女を見ていればわかることだ。
祖母に対して優しい言葉をかけ、きめ細かな心配をする。
どれも看護師という立場以上に、裏表のない思いやりを感じられる言動だ。
おそらく香耶は、相手がして欲しいと思っていることに対して敏感なのだろう。
ただ、その気持ちは自分自身には向けられないようだ。
身なりは地味だし、化粧も最低限。
目立ちたくないのか、近くのスーパーマーケットに出かける以外はマンションにこもっているだけの毎日だ。
どうして自分のことは後回しにしてしまうのだろう。