契約結婚はご遠慮いたします ドクターと私の誤解から始まる恋の話


***



拓翔と香耶、森谷夫妻と佐和に、古泉家の三人を加えた八人が一同に集まる約束をした日。
香耶はとても緊張していた。

香耶は、拓翔の両親からは反対されるのを覚悟していた。
実家とは疎遠だし、離婚経験もある自分では森谷家に嫁ぐのにふさわしいとは思えない。

待ち合わせていたホテルのレストランに拓翔の車で向かったが、助手席に座っていても小刻みに手が震えてくる。

「香耶なら大丈夫だ。きっと両親も気に入ってくれるさ」

こういう時、拓翔はとても楽観的だ。

「もしなにか困ることがあったら、拓翔さんを頼りますからね」
「お、やっと俺を頼ってくれたな」

その明るい声で、やっと香耶の震えは止まった。

ところがレストランでは、香耶の想像とはすべてが違っていた。
まず拓翔の両親が「会いたかった」と、香耶を喜んで迎えてくれたのだ。

「うれしいわ。気難しいお母さんが、香耶さんがお嫁に来てくれるって大歓迎なのよ」
「親友の孫ですから当然でしょ」

拓翔の母親と佐和の話をニコニコしながら聞いているのが、父親だと紹介された。
森谷総合病院の院長は厳格な人物だと聞いていたが、目の前にいるの男性はとても柔和な目をしている。




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