マフィアの弾丸 Ⅲ





 ____…真冬の場外、アーウェイさんの厚めなコートらしきものは羽織りに、
 膝掛けは
 彼のスーツジャケットを代わりとして腰あたりに巻かれているおかげで。

 足下は
 さほど冷えのぼせてはいない、・とは言えヒヤリ、肌を直接撫でる冷気は
 冬特有の突き刺さる寒さで
 ココロまでキンキンに冷えていくよう。



 …なんて。
 この状況をひとりでにグルグル脳内分析してもまったくの
 状況打破にもならないワケだが、



 私自身もゆとりを持つために、とふたたび深呼吸を繰り返すのに

 正直な頭とココロは一度、
 動揺に(いざな)われたらいう事を聞かないのが人間の悲しい(さが)



 いまだに
 落とされたシルバーブルーの頭も屈強そうな躯体も、屈められたままだから
 この男が
 なにを考えて行動しているのか。

 …私には
 検討もつかなくって、




 「────まぁ、自分では気付いちゃいねぇんだろうがな。
 普段っから無意識に一息ダマして
 喋る癖があるヤツでよ」


 「…」

 「あんま
 話し慣れしてねェんだろうなっつーのは
 …、わかってンだけど」




 掠れた、低めの声音で、その面差しはどこまでも温顔(おんがん)


 ほんとに。

 本当に大切なひとなんだって、気付いて、思い出した事があった。



 さっき船岡さんが言っていた、

 たしか、・・・・"許嫁(いいなずけ)"?



 そこまで結論づけて意識に浮上する姿といえば、
 ひとりだけ。

 可能性のある人物が脳裏に浮かんだ。




 (…………伊周(これちか)、さん)




 ふ、と脳内に回帰した記憶は────…まだ鮮明に新しい。


 煌びやかなあの会場で、洗練された身嗜(みだしな)みと所作、すべてが見合うかのように
 "あのひと"の隣りに、しゃんと背筋を伸ばし
 佇立していて。

 それはバイト先での姿とはまた違った美しさを醸し彼らの傍らに、
 静かに、存在していた姿。




 (………っ、)




 ・・・・・あっ、そうか、

 カーフェイ、さんとあの時・・・・キス、してた、




 船岡さん(彼女)の言葉を借りるなれば、自身の立場も(わきま)えた立ち位置で────…、














 「────…とんだ、
 『じゃじゃ馬』なンだよそいつがな」










 「…………ッ、?!」




 ────、グイッ


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