マフィアの弾丸 Ⅲ





 つい、こちらを鋭く見詰めてくる、磨き抜かれたような純銀の両眼があまりにまっすぐで、怖くなって顎を引けば、
 自分の目線も
 それに連鎖するべく足下に(かしず)いた彼からギギギ、と
 意識的に逸らしてしまって。



 そしてそんな私の
 やおらに動く視線にムリヤリ、
 合わせるように顔を傾けてくる男の気配もなんとなく、目の端では捉えているからこそ


 尚、
 …タチが悪い。




 ・・・・・・早、く。

 帰りたい、


 と今ほどおもった事はないくらいの、緊張感に、こころが折れそうになった。




 「フッ。────おいおい。ナぁニ、目ェ背けてンだよお嬢ちゃん?
 ん?
 声掛けられたら挨拶するのが
 どこの界隈でも礼儀ってモンだろ?」


 「………っ、」


 『礼儀』なんて。

 思ってもないクセに、



 普段は礼儀知らずデリカシー知らずの、セクハラ男なクセして。




 …なんて小言を。

 いつものように口をついて吐ければ、どれだけ楽だろうか。ともおもうが。


 残念ながら
 現状、────沈黙を崩せない理由があるので黙して耐えるしか無いのだけれど。


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