マフィアの弾丸 Ⅲ





 ────…ヒュオォオ、と。

 風が呻く音階をあげる。



 それは、そこいらに植え込まれた、手のこんだ造り物のような雑木林たちが
 冬風に(たわむ)れ、
 (いなな)くように葉擦れを(こぼ)
 音律を決め兼ねているようにも感じて、




 「……、っ、」




 ・・・・・・ここの噴水広場の空間だけ。

 目の前の小奇麗な男によって外界から、切り離されたように(しず)かだ。と唇を噛んだ。



 まるで。

 まるで、奥に秘めた欲求を、誘いだすみたいに、繊細に。


 なのに決して厭らしくもなく、肌をすべっていく五指たちの、密接な距離感。




 ジワリと広げられていく、熱。

 真冬の冷気が、体温をさげにくるハズなのに触れてくる
 ごつごつとした指先たちのせいで、
 緊張と、萎縮と、震えと、羞恥が。



 いっせいに────…脳内やら体感やら、理性やらを駆け巡って言うことを聞いてはくれない。




 「オイ。……口、開けろよ」

 「ッ、」

 「『ご挨拶』は?」



 スルスルと太腿のふちまで這ってくる指が、どこまでも妖しく、
 意図的で、



 「────ナァ、似てんだよなぁーアンタ。おれがよく、見知ってる、

 "そのオンナ"と」


 「……ッ?!」




 ・・・・・・バレ、ていたら、なんて緊迫と、羞恥とのないまぜになった、
 両者で。


 歯が・・・・・っ、

 かたかた、と鳴きそう。



 ・・・・寒さで、
 呼吸も閉塞しかかってるのに、




 (…………っ、こん、な、
 とこっ、で……、セクハラっ)



 …ん?
 ────…いや待て待て私、『セクハラ』以前に。


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