マフィアの弾丸 Ⅲ





 ふと、我に返ったように現実に引き戻された思考が、冷静に『いや、イヤイヤ待て伊万里この人ら"許嫁(いいなずけ)"がいる』とかかんとか、囁かれてなかったか?────と『待った』をかけるべく、自身での軌道修正がはいって不動になる。




 船岡さんに然り。


 会場に大勢いた、
 身なりを着飾った豪奢(ごうしゃ)絢爛(けんらん)な紳士や婦人方、
 どこぞのご子息・ご令嬢でさえも。

 そんな雰囲気と視線で
 如実に醸しだしていたんだ。



 優美なドレスを身にまとい、人々の羨望をひきつけて止まない────…、彼女・伊周(これちか)さんのことを、

 彼らにとっての、
 "特別"なひとだ────…と。




 ッ────…なんて、っ



 なんて事をっ!!こちらが頭で処理する間もなく遠慮も、デリカシーのかけらも無くなこのお人。




 「っ、………?!?」


 ヒヤリ、と一気に空気が触れた、太腿と太腿のあいだ。

 それに驚き、パッ!と逸らしていた視線をもどせば、シルバーブルー頭の男に割り広げられていく自分の両膝裏が目にとまって、




 ・・・・・・・・・・っえ、・

 え?、

 
 なんの冗談?




 ・・・・・・・っちょ、


 「…ッ、」


 あぶっ。危ない!!私、いまは『口が聞けない秘書』設定なのにおもわず、開口しそうになった危うい、…危うすぎるこの近距離。



 先ほどまでのグルグル、ぐるぐる渦巻いていた悪意とか、負の感情とか醜悪(しゅうあく)なエネルギーとか。

 ぜんぶ、全部、ひっくるめていたモノが弾かれるぐらいの衝撃な触れ合いに、
 さすがに。




 ────さすがの私も。

 サァァーっと血の気が引いた────…、


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