マフィアの弾丸 Ⅲ





 重心がたもてず、

 ヨロッ、とふらついて。



 後退しようにも真後ろにはすぐ、噴水が、私たちの押し問答に構わず
 その無生物な水を噴き出し
 水溜まりをつくっているから、




 ────真冬の、さらにいえばいつ、誰とも知れない会場の列席者が行き交う(現在は皆、会場入りし人気はない────とは言え)かもしれない場所で。




 落ちたら、瞭然(りょうぜん)

 凍える寒さとびしょ濡れ・に、なるにちがいない。



 そんな、二重の失態オンパレードなんてたまったもんじゃない、
 ほんと・・・・・。




 (……ッ、なんっ、とかし、て。ここから逃げッ、)



 そう、────…おもうのに。




 そんなやすやすと抜けれるほどに私も、余裕があるワケにもいかず。

 体勢が、背後に崩れないよう、自力で堪えるのでせいいっぱい。




 「っ、………、…ッ」



 ・・・・・ッ、・・・、

 声出しちゃ、・・ダメなのにッッ・・・・、




 寒さとは裏腹に、じぶんの意思とは反して、与えられるはじめての感覚に、火照りだす頬。



 こちらの焦りと、羞恥と、苦悶と、畏怖と。

 きっと混乱に右往左往してる私の内情なんて、とっくに、理解してるクセに。




 ────わかっているクセに、太腿の内側に擦れる、美しいシルバーブルーの頭が
 ソコからはなれてくれることは無くて。



 チュ、ク、

 ちゅぅッ



 「っっ、〜〜ッ、」



 ぎゅむ、と。



 与えてくる刺激に耐えるように、下唇をおもいきり噛んで、喉から出かかった声をひっしに、押し殺した。



 内腿に掠める、繊細にくゆったシルバーブルーの髪質。

 股のあいだに押し込まれた頭を、のけたいのに結果かなわず。




 ただひたすらに
 膝上まで捲り上がったドレスの裾を下ろすので、沸騰した脳はいっぱい、いっぱいだ。


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