マフィアの弾丸 Ⅲ





 体育座りで膝をかかえ直し。


 背面は浴槽の、背凭れに重心をあずけて顔を、仰向けにした私は────…。



 なんの意味もなく。

 浴室の天井に視線をやって「〜ふぅウ、」とゆっくり、
 ちいさく。


 胸を撫で下ろした。




 「ッけほ、……ケホっ」



 風邪の咳や、鼻詰まりならば。


 喉が詰まった苦しさだからか風邪薬を飲めばまだマシには、なる。




 だけど、────…。




 「ッ…
 えホッ……けほ、ケホッ」




 喘息は、呼吸器官に閉塞感がでてしまうため、背筋を丸めないと
 息がしづらく動くのすらも。


 億劫(おっくう)で、ツラくて。

 仕方がないのだ。



 ゆえに、からだ全体で
 息をするので精一杯で。




 「〜ッハ、ッハァ、……はぁ」



 っっ、


 ・・・・・・頭で、っごちゃごちゃ考えてしまうのもしんどい。

 からだも物理的にしんどい、



 なんで私、って。

 こんななんだろ────…、













 〜〜〜〜♪♫







 ____イライラと、モヤモヤと、

 失望感と。


 どうしようも無い自分の苦しさに苛まれ膝小僧に額を、擦りつけ
 ていた折。



 聞き馴染んだ着信音が、けたたましくその存在を報せにきたのには────、
 寄った眉間を
 感じずにはいられなかった。




 「…」




 "誰から"なんて、愚問(ぐもん)

 解っている。


 こころに(つっか)えを抱えながら指先でタップした、ロック画面には
 着信履歴が数十件。



 その主は言わずもがな。

 まるで、パーティー会場にお忍びで出向いてしまった私に、揺さぶりをかけて
 きているかのように錯覚する、



 ────・・・"アーウェイさん"、

 からの連絡。



 遡って見てみれば
 何件かは、"カーフェイさん"からのものも(しか)り。


 せめてもの救いは、"彼女から"のLINEが無いことである。


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