マフィアの弾丸 Ⅲ





 ────サク、サクッ




 「────ヒッ!!アグっ……
 もうッ、ヤメぇくれぇっ」


 「────かっ、んべ、んッ
 しェ、ッ」




 ────カツン、



 痛みに悶え、助けをもとめるように死神のごとく美しく冴えわたる男の、
 足下に平伏し
 手をのばそうとした
 屈強そうなスキンヘッドの一人は、


 紛れ込んだどこぞの、(ねずみ)



 つまり____…
 ウォングループの
 構成員ではなかったということになる




 「────アガぁあ!!!」




 容赦のない脚力が、慈悲もなく垂直に振り下ろされ、骨の砕ける音がふたたび、大音量に轟いた。



 血生臭い異臭がコンクリートの壁面にこびり付き、大の大男たちが再起不能にさせられた光景は平生(へいぜい)では想像もつかないことだろう。

 それを縛られながら見ているしかできずにいる女は、壮絶な恐怖の表情へと塗り変わっていく。




 ____猛烈に美しい、女性的でない野生美をたずさえたその人は、
 ベスト着でジャケットやコートは脱いだまま。



 先刻まではダークレッド色味の唇を、
 電話越しの"誰か"へと向けられていた、

 決して、
 決して自分にふり向くことはない、
 温情の入り交じった声で────…。


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