マフィアの弾丸 Ⅲ
(……ハッ。ソートー歪んでンな、おれも)
すでに"彼"の手元にあるスマートフォンは通話が切れており。
画面にはなんの味気もない、黒い壁紙に扮したロック画面が
自身の歪んだ冷笑をうつし出し
用途を為していないだけだった。
「っ、____……ユルっ、…赦して、ッくださッ、…アーウェイ様っっ」
脳裏に浮かんだ、通話越しにきこえた少女の息遣いがやや、苦しげだったか。と首を捻っていたところに背後から、か細い女の赦しを乞う嗚咽が投げかけられ。
それまで、スマートフォンに寄越していた純銀色の視線はしだいに、冷ややかに尖っていくのを
男は止められはしなかった。
哀愁から鈍色の感情に切りかわり、
荘厳さをまとったおなじ人間とは思い難い空気感。
(・・・・・目の前の薄汚れた女豹がどーなろうが知ったことじゃねぇーが)
────しかし。
久しぶりに対話した"あの少女"の、やけに、にべない対応と、
知る筈のない会場に紛れ込んだ一匹の、"躑躅色の迷い猫"の介入。
お呼びでないのは重々、承知、────…そうまでして
ムリヤリ接触し
"彼女"を連れ添ったその、盲信がいずこからこの女をつけ上がらせたのか。
まったく
厄介、極まりない。
こんな、
リスクを冒してまでも。
(────…おれらは、慈善事業してるワケじゃねーんでな)
一見、無害な姿を取ることで、人間社会に溶けこむ清廉潔白・金回しのいい事業なんてモノは、この俗世間、ザラにある。
どんだけ業績上々に展開していようが、ただの、私益でひとつでも動いたというエビデンスを露呈してしまえば、もはや
その会社は、
コチラから断ち切るまで____…。