マフィアの弾丸 Ⅲ





 ────…「アーウェイ様、そろそろお時間になります、

 と。
 "カーフェイ様が"」




 ピタリ、



 残虐なイロを乗せた純正な銀の双眼の(ぬし)が、まるでこれ以上、暴発せぬべく。と

 ベスト・タイミングに入電がはいった事には、それまで諦観するしか無かっただけに。



 "無用の長物(ちょうぶつ)"として存在感を消し、
 扉口で見張りをしていた、

 出立ちばかりは
 厳つい風体をしたスキンヘッドの男たちが。


 ようやくして、

 ホッ。────…と
 胸を撫で下ろす運びとなった。 




 何せこの、シルバーブルーの美丈夫においては激情に駆られると誰も、手に負えない獣じみた気性が潜在している。



 ────現に、今も。



 横やりに声がかかったコトには至極、不愉快そうに表情筋をゆがめ。

 血飛沫(ちしぶき)の飛んだベスト着スーツが彼を、異様に、奮起立たせるよう匂い立っている。




 どこまでも
 末恐ろしい、ウォン一家の血の末裔(まつえい)



 さまざまな教育を、幼少期より受けさせられてきた彼らは
 帝王学、人間学、バイオテクノロジーから
 体術を用いる格闘、射撃、剣術まで。

 あらゆる角度から人間の『完璧』を強いて、専属の工員により
 精魂込められ
 育ってきたこの一族を。


 容易に制止できる・あるいは歯止めをかけられる者とは、そう、この俗世に存在しないのでは?と畏怖するほどに。


 "ウォン一家"は、

 その血筋でさえ"特別"であるのだ____…。




 彼ら一族に魅入られ、執着されてしまった者を世間では、羨望や憧憬(しょうけい)(ステータス)として祭り上げられることだろう。

 或いは、何も知らずのうのうと、『安逸(あんいつ)者』なんてバカげた口語で(はや)し立て、敵意を向ける派閥もおそらく。



 しかし内情を把握する部下からしてみれば、それは、『お気の毒さま』と形容するほか適正が見当たらない。


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