マフィアの弾丸 Ⅲ





 早朝の(とばり)が下りた厳冬のなかでは、────…たとえ数十歩さきの人影とて、捉えづらい。



 しかし、その神の領域に達した美貌の存在感たるや。

 朝方の暗幕さえ"彼"を、超越した装飾品のごとくとり巻いているも、同然。




 ・・・・・至極、不機嫌だ、

 と。すぐにわかった。




 フワり____、輪っかを描いて(くゆ)らせた紫煙は真冬の
 空へと立ち昇り
 まるで、常習的と言わんばかりに慣れたように喫煙する姿の、
 珍しいとさえ言える"彼"。



 平時ならば私のまえでは、ただの一切だって、煙草の欠片すら見せたことが無い。



 どちらかと言えば
 ヘビースモーカーな彼のほうがぷらぷら、と。

 いつも
 "ソレ"を、口にしていて────、


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