マフィアの弾丸 Ⅲ





 そして気がづけば、見慣れたあの、高級車種である黒塗りの
 リムジンのまえに
 来てしまっていて。



 近頃はご無沙汰だったために、(いささ)か萎縮するこころ持ちだが。



 立ち所に意識がトリップするのは先日、見てしまった光景(────と言うより、
 盗み見に近いかアレは)で。




 ・・・・・そう、だ。

 あの日、通帳を職場に置きわすれた日。



 カーフェイさん、が、伊周(これちか)さんと相対(あいたい)してた、




 「…っ、」




 そこから一気に、グワッと回想やその後のパーティー会場での不祥事《アレこれ》など
 その他、諸々まるで。



 まるで走馬灯のごとく頭のなかに一瞬で、蘇ってきたことには
 冷静ではいられない感情の波が駆けめぐり
 さすがに、

 ────、ピタリ。



 足を、

 止めてしまった。


< 58 / 114 >

この作品をシェア

pagetop