マフィアの弾丸 Ⅲ





 カーフェイさんの、(たしな)めるような口調を皮切りに、それでも面倒そうに応じ(────る事にし)たらしい
 アーウェイさんの、
 首元にあった気配がス、と大人しくはなれてくれた様子を感じとれば。



 咄嗟に。
 ホ、っと胸を撫でおろすことに成功して。



 いやに、動悸がはげしくなって来る自負をひっしに、抑制しながら『いつも通り、いつもどおり』────…を呪文のごとくとなえるのだけれども、




 できるだけ気持ちを、逸らないように。と奮起すれど

 一向に収まってくれるほど私も男性経験が、豊富じゃないワケで。



 そのうえ。

 これ以上、距離的に近しいのも、しんどいのでせめて。



 せめて、彼の胡座から隣りに、席移動しようと腰を、僅かにもちあげかけた時だった。




 「…喘息は、大丈夫か」



 「………



 ……………………………ぇ?」




 おもいもよらない方角からの、カーフェイさんの案じる言葉に、一瞬、思考が停止してしまう。



 同時に移動しようと浮かせた腰も、立ちどまってしまったら

 うしろからの腕力でふたたび、アーウェイさんの胡座のあいだに、収まる事態に舞い戻ったという顛末(てんまつ)




 ついでに耳に、ヒンヤリ、とした感触とピリッ、と皮膚を貫くような痛覚を与えられたのには、

 「っ(いった)!」とつい、
 肩を跳ね上げつぶやいてしまった。




 「いーからガマンしろ。動くなよ」

 「…っ、は、はぃ」


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