マフィアの弾丸 Ⅲ





 「オイそれおれのせりふ。言った傍から何、どーどーとパクってンだよ」


 「お前は日頃の行いがワル、」

 「テメェにだけは言われたかねーよくそカーフ」


 「目上のにんげんに対する礼儀は弁えろと何度、調教すれば
 板につく甘ガキ」

 「ハッ。ダぁレがてめーみてぇなヤローを実兄として慕うかよ。
 勘弁しろってンだ」




 「ぇ────、兄?」




 ____あっ、しまった口がすべった。とすぐにひらいた
 唇を噤んだが時すでに、遅し。



 向けられたのは、
 二対(につい)と二対の訝しむ視線だ。


 真上からの純銀アイの持ち主は、いまだに、消毒液の浸されたコットンで私の、耳たぶを丁寧に治療し。

 真正面から突き刺さる(ネイビー)アイズの彼は、キリッと伸びた柳眉(りゅうび)を片眉だけ吊りあげると、「…あぁ」とひとこと。



 たった一言。

 なんて事ない風にそう溢すだけだった。


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