マフィアの弾丸 Ⅲ





 その、苦笑いの延長線で吊り上がり気味だった口許を、もごもごと
 開口するかしまいか。



 そんなふうに、一連に黙考していた結果、それでも
 閉口することを選んで。




 とたんに閑静になった車内では私の、
 耳の消毒をする
 アーウェイさんの動作だけがただ、ゆるやかに空気を流れていった。


 ピチャ、とした音だけが
 分刻みに鼓膜にとどくだけの、おだやかでシン、とした無言の空間。

 おとなしく
 彼のお膝元のあいだに収まってる自分も、どうかと思うが、




 (…そう、言えば)




 ふ、とデジャヴが到来した感覚に、力んでいた目をゆっくり、瞬きさせる。



 そして再度、目蓋をひらけていくと日々、忙しなく動いていた自身の両眼が
 いまは、
 落ち着きはらって定まっていることに気付く。




 (……こんな、やさしい時間。
 いつ以来だっけ)




 ────急激に、いろんなことが舞い込んで、悩んで、疲れて、
 家でも、
 外でもひとりで整頓する時間も
 無くって。




 それでも、____…


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