マフィアの弾丸 Ⅲ





 ____…ちょろちょろ、と上品に透明な湧き水を吐き出しているライオンは、著名な彫刻家によってつくりだされたようにご立派で、見事な壮観だ。と感心さえ覚える。




 現状、繊細に彫られたその彫刻像を背に、噴水の(へり)に座らされた私は
 なぜだか。

 シルバーブルー頭の男に(かしず)かれヒールで靴擦れした踵を、
 何ともていねいに手当てしてもらってる。



 ・・・・・・なんて、

 居た堪れない状況。




 どうしてこんな事になったのか。

 経緯(いきさつ)を辿ってみれば────…、




 ────…それは約、数分前のこと。




 四方から突き刺さってくる凝望(ぎょうぼう)に、
 脳内では『四面楚歌(しめんそか)な気分だ、』などと四字熟語がグルグル、
 グルグル横行して。


 そんな陰鬱な気分を負ったまま、それでも上げられない視線は
 いつまでも自分の、
 ハイヒールの先を見詰めるしか遣る瀬もなく。



 眼前の、よく見知ったアーウェイさんに注目が集まってる。と理解していながら
 そのなかには

 たしかに、
 自分の姿も織り交ぜられていて。




 ・・・・・オマケに右手をとられ手の甲にキスをされた、なんて始末だ。


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