マフィアの弾丸 Ⅲ





 ____…血をわけた"義弟"に、羽交締めにされた少女の、
 すらりと伸びた(すね)を掴んだカーフェイは。


 その、あまりの足の細さに、────ピクリッ。
 青筋を立て
 顔を険しくさせる。


 精巧に
 ととのえられた柳眉(りゅうび)をやや、吊り上げ気味にし。

 精魂こめられた美貌をもつ万能の男は、
 少女の素肌に、いとも容易く触れだしたのである。




 ・・・・・ちゃんとメシを食ってるのか、




 簡素なジャージで。

 身体(しんたい)を覆い隠す恰幅を常日頃から好むのは、
 こういう事由もあった所為か。



 隠れていた少女の素足に、指先を潜りこませ。

 柔く親指でめくっていくと
 白く、日焼けの少ないなめらかな
 ふくらはぎが玲瓏たる男のまえに呆気なく、晒された。



 ツーー、と自身の骨っぽい男指でなぞらえば、
 上から
 ちいさく息を詰めた呼吸の音が聞こえ。


 足首から上半身まで。

 その柔らかで小ぶりな肢体がわずかに、震撼したのさえ肌越しに
 わかるほどだった。




 「____ナァに。怯えてンの?いつもの威勢はどーした」


 「ッ、…」

 「…おい」




 コロコロと。

 まるで赤ん坊が玩具で遊ぶような喜色で、腕のなかの少女を
 嗤っているアーウェイはどことなく、
 楽しげだ。



 常ならば
 人格を遣いわけるコイツが、伊万里に対しては当初から
 素の自分を曝けだせている様子。




 (・・・・・厄介だな)



 "義弟"とはいえ。

 好んだ女を【共有】しなければならんマフィア界隈の【道理】には、いまだに
 賛同しかねるが、、、。




 ────しかし、男ふたりに
 迫られ動揺よりも畏怖を色濃く表情におさめている
 少女をみると
 さすがに性急すぎたか、と。


 カーフェイは気を改め、
 "義弟"の暴走を早めに牽制しておくに留めた。



 そうして、ふたたび白いふくらはぎへ視線を落としていくと
 その美麗な顔をわずかに傾け、皮膚と唇の距離を躊躇いもなく、埋めていった。



 「ッ、へ、…ッぇ、まt……ッ」



 触れる、唇。

 さすがに触れ合った一瞬は、口づけされた伊万里も息を、止めかけたようだが、それ以前に引き攣ったような惑いが、
 口端から溢れるほうが先であった。



 宝石のような、闇色(ネイビー)アイを。

 流し目のようになめらかに移行させた彼は。


 動揺する彼女の顔を、艶やかに見つめあげながら
 やわらかな皮膚を、
 唇で何度も喰んでいく。




 少女は、今この時分、彼らがなにを考えこの行為に及んでいるのか。

 理解しあぐねる表情であった。


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