マフィアの弾丸 Ⅲ





 「…恐いか」

 「…っ、」



 恐がるな。そう呟きながらも口のなかに含んだ女の柔らかな皮膚の、感触が
 今にも、
 なし崩しのごとく理性を壊しにかかるので
 瞬きをするコトで、
 薄汚れた邪心をどうにかごまかした。




 ・・・・・狂ってる、という自負はある。



 まだ、フラフラとした関係性で、名も無い延長線なのをいい事に

 触れたぬくもりと甘さに酔いしれ、それ以上を求め宛て縋ってしまう。



 ・・・ゆっくりで、構わない。


 そんなふうに納得したはずだった。

 彼女の性格に、合わせれば。



 媚のない、まっすぐな瞳で対峙しにくる少女の、ゆとりを持たせた
 歩調に沿わせて、




 ____チュ、っく



 「っ、……ッ」


 吸いついたふくらはぎや、ほそい(すね)の筋に散らされた、紅い華。



 カーフェイが唇で肌をなぞるたび、伊万里は困惑と羞恥の混同した表情で身を、縮こませていく。

 逃げようと思えばふりほどける強さであるのに、しかし、そうはさせてくれない鋭く美しい、闇色(ネイビー)アイ。




 そんな少女の、視線を独り占めにする"義兄"の独壇場にはさすがの"義弟"も、不服を唱えたいらしい。


 吊り上がった方眉をさらに、顰蹙(ひんしゅく)させ、ゆったり、ウェーブを描いたシルバーブルーの頭が
 まるで。

 対抗するように
 少女の華奢な肩口へと、収まってゆく。




 「ッぇ、」

 「…オイ、(ソッチ)ばっか見てンなよ貧乳」



 ────…そう皮肉っぽく溢し顔を下げたアーウェイは、伊万里のジャンパーを
 強引に肩後ろまで引き剥がすと、

 あろうことか
 彼女の肩後ろに柔く、噛みついたのである。


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