マフィアの弾丸 Ⅲ





 …完全に裏返った声だがその声のふくみに、切迫感が滲んでいたのをとらえると、
 ふたりの男の動きも
 ようやく、静止にとどまった。



 少女を見下ろせば、(────カーフェイは見上げる形になる)
 もともと
 背丈も、それほどでは無い姿が
 さらに身をちぢこませ。


 落ち着きのない視線をうろちょろと
 車内に彷徨(さまよ)わせた結果、____…ある瞬間には
 合点がいったように、
 奮起し、



 「……セ、セフレ、は。ご遠慮します」なんてことを小さく。それはそれは
 ちいさく、音にしたのである。




 「…」

 「…」



 男たちは目が、点、である。

 それもまた、見事な造りもののようである。




 「…………………なんの話だ」



 つまり話が見えない、と言いたいのだろう。


 彼らからしてみれば瞭然(りょうぜん)の反応であるが、
 しかし
 少女からしたら
 納得のいかない"ナニか"があるから
 こうして、拒絶を示しているのだ。とカーフェイは目視で悟った。



 それは、伊万里からして
 先を促しているようにも思え。

 言葉にするべきか、
 否か。


 どこか決めあぐねているかのようであった。


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