マフィアの弾丸 Ⅲ
こんな真冬の早朝下、一般公道に堂々、路上駐車している車中でいったい、
"ナニ"を繰り広げているのか。
些か
珍妙なコメディアンのようである。
明け方もだいぶ、更け、
朝陽が宵闇から徐々に顔をだす。
フルスモーク、とは言え暗がりから陽の光りが差し込むと人工的なそれも、
用を成さない。
神々しいほどの美しさをもち、且つ、身分も能力も極上の男・ふたりに
取り付く島もない切りかえしで
迫られっぱなしな伊万里だが、
わずかに差し込む朝日によって自我をとりもどしたのか、
ジタバタ。と
彼らから逃れるべくちいさな体を
小鳥のように打ち出し反論をつらねていく。
「っと!……や、…ぇっと。とりあえず、……フツー、に座らせてもらえません、か」
「逃げんだろお前」
「いや、逃げませ」
「さっきおれの顔見て踵かえしたヤツがよく言えたもんだナぁ?
あぁ?
コレか、
このちっちぇー口が嘘っぱち吐くンか?
────あ゛ぁ?」
「ぅぶっ、」
半ば強引に、うしろからニョキっと顎先に回りこんできた男の手が
伊万里のちいさな顎を絡めとるなり、
むにゅ、と両頬を掴んで。
小鳥が親鳥から餌を食べるような
口の尖りに
させられたものだから、さすがの少女も、丸い頬に熱が集まっていくのがわかった。
「ッッ、」
「…何赤くなってんだお前」
「っひ、……ぅ」
「…おい、アーウェイ」
「しかも、ンななまっ白い足しやがって。いつまで経っても細ぇーしよ」
「……あぁ、それは。
…そうだな」
顎を掬われているてまえ、否が応でも顔の角度は斜め後ろの、
シルバーブルーの美神に向いている
ワケだが。
その反対の斜め下からは、また、もうひとりの突き抜けた美の、彫像のような
グレーブラック髪の男の、首を傾げる気配があり。
兎にも角にも、
未体験のおおい少女にとっては。
目のやり場に困る
ある種、過酷な現状であった。