マフィアの弾丸 Ⅲ
(………、息、苦しい)
カーフェイさんやアーウェイさんたちは、
いつも、
こんな刮目を浴びている
のか。
現状の私に向けられてくる含みと、ちがう事と言えば羨望や憧憬などの
好意的なものでは、
決してなく。
・・・・・妬みや敵意ばかり
が含まれているということ。
船岡さんに連れられているとは言え、
肝心の彼女はアーウェイさんからの試すような質疑に怖気と、
惚けとの混じり合いで茫然自失。
私はと言えば・・・・・・、
バレてしまわないよう、自ら気配も息も、殺して呼吸すら短く躾けて。
過剰な緊張やプレッシャーでからだに酸素も行きわたらず、
呼吸は、だんだんと、浅くなっていく一方で
竦み上がるばかりであった。
・・・・・・ああ、緊張が解けない、
くるしい、
突き刺さる四方からの視線も、目前にいるシルバーブルー頭の男からの視線も、
その奥に君臨する、
────…グレーブラックの髪の、
"あの人"からの視線も。
ぜんぶが、受け躱すにはあまりに、自分にゆとりが無くって。
────…そんなふうに。
右手を掬われたまま、顔に張り付く髪をも耳裏にかけられて、
ビクンッ。肩を震わせたタイミング。
気が付けばグイッ、と力強い引力に腕を引かれ、足下ばかりを見詰め下ろしていた
自分の視野が、
動きを見せたような景色をとりいれていく
のをただ、
ただぼうっと・・・・・、
観客のように目に投影するくらいしか遣る瀬も無く。
SPである、ハイグレードなスーツを着こなした、ガタイの良い
男のひとたちも数人、
連れ立って人々の注目のなかを
縫い歩いて出た会場。
私は腕をキツく引かれるがまま、
転びそうに縺れる足を、まえを歩く男の速度になんとか踏ん張ってついて速歩して。
そうして辿り着いたのが────…、
冒頭にもどる、
噴水広場だったというのだ。