マフィアの弾丸 Ⅲ





 「____…だっ、…えっと。待って、くださ、……ぁの、」




 すこし、落ち着こう。


 まず、何から切り出せばいい?

 いまのは簡潔すぎたか?


 では一体、自分が見てしまったあの"キスの現場"は?



 ────…否、それを言うとあの日、盗み見ていたことがバレてしまう。




 "義弟"に抱き包まれた腕のなかで、どうやら、伊万里がなにかを伝えよう、と。

 懸命に熟考しているのは見て取れるのだが
 いかんせん、
 美貌の化身の彼にとっては、


 ____それが"義弟"の腕のなか、という状況が
 どうにも気に食わないらしい。



 純度高い蝋石(ろうせき)のようなネイビーの双眼が、不釣り合いな熱の籠った色に変化し。

 カーフェイはなかなか、口を割ってくれない伊万里に、追い討ちのごとくスルスル、と。


 慣れた所作で少女のズボンの裾をあげ、ついに、太腿までズリあげられてしまった事には
 さすがの彼女も、
 いま気付いたかのように、
 ギョッとした眼差しでカーフェイを見下ろした。




 「ぁ。の」

 「答えなければ噛み付く。…噛み跡、つけたくねぇだろ」


 「っっ、」


 「いいか、俺に隠し事はするな。一切だ。他の連中の言うことにも耳を貸すな」

 「おれ"ら"、な。…血ぃのつながりある"実の弟"をはぶいてんじゃねぇーよ」

 「…半分だけだろ。威張るな」

 「威張ってねぇ」


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