ミーコの願い事 始まりの章 「ペンタスとヒトデ」
かすみ草
もう遅い時間だし、後数分休憩したら、気合を入れて立上らなきゃ。
気持ちを切り替えるように顔を上げると、数メートル離れた街灯の下に目線を向けていた。
そこには制服姿の少女が、こちらを見つめ立ち止まっていることに気づいた。
時刻的なことと顔がはっきり見えなかったことに、街灯の光に照らされる少女が茜であると理解するのに一瞬遅れてしまった。
「京子さん」
聞き覚えの有る呼び声に一瞬驚いたが、その日の疲れを忘れるほど、喜びもこみ上げていた。
私はベンチから腰をあげると、茜は遅い足取りで近づき、かしこまったように話している。
「良かった。でも、どうしたのこんな時間に」
「お祭りの日はすみません。浴衣姿を一目だけでも見てもらいたくて、駅までは出かけたのですが」
質問の内容とは違う謝罪の言葉に、心を締め付ける。
お祭りの日に会えなかったことを気にし、今まで時を過ごしていたのだろうか?
話からすると、あの時見た花のような姿は、幻ではないことを理解した。
「私見たのよ一瞬だったけど。素敵だったわ。それに、その……なんだかごめんなさい。私が変な約束持ちかけたから」
悲しそうな息づかいに、その場の雰囲気を明るくすることが出来なくなってしまう。
茜は葉が落ちるような、小さな声でつぶやいた。
「いえ、そんな……すみません」
「なーに、やだー何でまた謝るの? この話は終わり。そんなことはいいから。家のかたが心配するから、今日はもう遅いし帰りましょう」
歩き出そうとしたが、それに答えることなく、立ち尽くしている。
上体をそらし視線を下げていることから、帰ることを拒んでいるようだ。
初めて見せたる子供らしい態度は、彼女のことを、いじらしく映し出していた。
「どうしたの? ほら、駅まで送って行くから」
そっと顔を向けたが、すぐに視線をそらしていた。
困りながらも彼女を見つめると、清潔な容姿に小さな哀しみが込み上げるようだった。
こんな遅い時間帯なのに、身なりが整っている。
シワの無い制服。ブラシを通したばかりの髪の毛に目新しい髪留め。
この時間を大切に思う、心の表れだろうか。
そんな彼女には酷であったが、それでも私は、帰りやすい切っ掛けの言葉を考え手を差し出した。
「うーん残念だなー。お散歩しながらだったら、とーてもロマンチックな話しが、聞けるんだけどなー」
悲しげな表情の茜だったが、私らしくない言葉の意味を理解すると、徐々にと顔を硬らせいた。
「この夏限定だよ」
「ぷっ」っと吹き出す声は、どうやら我慢しきれなかった笑いが漏れたようだ。
何かを諦めているかのように、表情を緩ませると、私も笑顔で、再度手の平を強調するように見せた。
茜は差し出した手を掴むことはなく、そっと私の腕にか細い手を通していた。
「わかりました。今日は帰ります……でも何だろうロマンチックなお話って」
気持ちを切り替えるように顔を上げると、数メートル離れた街灯の下に目線を向けていた。
そこには制服姿の少女が、こちらを見つめ立ち止まっていることに気づいた。
時刻的なことと顔がはっきり見えなかったことに、街灯の光に照らされる少女が茜であると理解するのに一瞬遅れてしまった。
「京子さん」
聞き覚えの有る呼び声に一瞬驚いたが、その日の疲れを忘れるほど、喜びもこみ上げていた。
私はベンチから腰をあげると、茜は遅い足取りで近づき、かしこまったように話している。
「良かった。でも、どうしたのこんな時間に」
「お祭りの日はすみません。浴衣姿を一目だけでも見てもらいたくて、駅までは出かけたのですが」
質問の内容とは違う謝罪の言葉に、心を締め付ける。
お祭りの日に会えなかったことを気にし、今まで時を過ごしていたのだろうか?
話からすると、あの時見た花のような姿は、幻ではないことを理解した。
「私見たのよ一瞬だったけど。素敵だったわ。それに、その……なんだかごめんなさい。私が変な約束持ちかけたから」
悲しそうな息づかいに、その場の雰囲気を明るくすることが出来なくなってしまう。
茜は葉が落ちるような、小さな声でつぶやいた。
「いえ、そんな……すみません」
「なーに、やだー何でまた謝るの? この話は終わり。そんなことはいいから。家のかたが心配するから、今日はもう遅いし帰りましょう」
歩き出そうとしたが、それに答えることなく、立ち尽くしている。
上体をそらし視線を下げていることから、帰ることを拒んでいるようだ。
初めて見せたる子供らしい態度は、彼女のことを、いじらしく映し出していた。
「どうしたの? ほら、駅まで送って行くから」
そっと顔を向けたが、すぐに視線をそらしていた。
困りながらも彼女を見つめると、清潔な容姿に小さな哀しみが込み上げるようだった。
こんな遅い時間帯なのに、身なりが整っている。
シワの無い制服。ブラシを通したばかりの髪の毛に目新しい髪留め。
この時間を大切に思う、心の表れだろうか。
そんな彼女には酷であったが、それでも私は、帰りやすい切っ掛けの言葉を考え手を差し出した。
「うーん残念だなー。お散歩しながらだったら、とーてもロマンチックな話しが、聞けるんだけどなー」
悲しげな表情の茜だったが、私らしくない言葉の意味を理解すると、徐々にと顔を硬らせいた。
「この夏限定だよ」
「ぷっ」っと吹き出す声は、どうやら我慢しきれなかった笑いが漏れたようだ。
何かを諦めているかのように、表情を緩ませると、私も笑顔で、再度手の平を強調するように見せた。
茜は差し出した手を掴むことはなく、そっと私の腕にか細い手を通していた。
「わかりました。今日は帰ります……でも何だろうロマンチックなお話って」