ミーコの願い事 始まりの章 「ペンタスとヒトデ」

忘れていた記憶

 翌日会社では、昼休みになると記憶をたよりに、最寄りの花屋を探していた。
 窓から見える街並みを確認しながら、思い出せたらと試みていたが、目的の花屋は有るようには思えなかった。

 この辺には、やっぱり無いか。逆側の駅に確か一軒あったような。
 腕を組み考え込む姿を見てか、蘭が側に寄り話かけてきた。

「どうしたんですか? けわしい顔で景色を眺めて」

 先日強がっていただけに、どう話したらいいのか、とまどってしまう。
 でもここは正直に打ち明けてみよう。
 何も格好つけることも無いし、良い情報も得られるかもしれない。
 そう思うと昨日の出来事を、相談するように話していた。

「そうですか。売っていませんか。私の時はかろうじてあったので」

 会話する中、少しズルイ考えが頭に浮かぶと、蘭の対応を確認するように尋ねていた。

「そうだ蘭のペンタスちょうだいよ、もうお願い事したんでしょ」

「だ、駄目ですよ、願い事は一回だけ、もう一度すると最初の願いは消えてしまうんです」

 蘭は言葉を聞くなり、慌てるように否定をしていた。

 やはりと納得しながらも、その仕草から、よっぽど大事なことをお願いしたのだろうか?
 少し怒ったようにもとらえられる。
 理由を知らなかったとはいえ、少し申し訳ない気持ちになっていた。

「そうかー、ごめんね。ところで、蘭は何をお願いしたの? そこまで信じているのも意外だし、便秘で悩んでいるとか?」

「ち、違いますよ」

「じゃあ、何よ?」

 蘭は少し沈黙すると、今度は私の気持ちを探るように話していた。
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