ミーコの願い事 始まりの章 「ペンタスとヒトデ」
「友達からペンタスの話を聞いたときは、私も半信半疑だったのです。購入する友達の付き添いで花屋に行って、そのお礼に私の分も購入してくれて、折角だからこの会社で役立つ、デザインが上手になればなんて思っていました」

「……」

「そんな時、さとしから学校を止めると聞いてしまい。私、ワラにもすがる思いでそのことをお願いしていました」

 蘭の深刻な表情は、次第に期待を込めたものに変わっていた。

「学校を止めないでほしいと……お願いしたら、そしたら京子さんが言葉をかけてくれて、これって偶然でしょうか」

 そんな不思議な話を聞いても、慌てることは無かった。
 偶然に起きた出来事でも、魔法のような話でもどちらでもよく、ただ友人である蘭が、幸せを感じてたことに嬉しくなっていた。

「そっかー、そんな大事なお願いをしたなら、もらうわけにはいかないか」

 お互いが納得するように微笑んでいると、私達の間に小さな風が流れているようだった。
 窓際に置かれた植物はその風にをゆられ、会話を聴き頷いているように思えた。

「やだー貴方もいっちょ前に、話に参加していたの? 貴方も同じ植物ならペンタスがどこに咲いてるか、教えなさいよ」

 冗談を語ると、同様に揺れる植物を確認し微笑んでいた蘭だったが、気付いたかのように植物を手に取り話し始めた。

「京子さん、これペンタスじゃないですか?」

 慌てそう話したものは、私が拾ったあの小さな植物のことだった。

「この弱々しい植物がペンタス? これが? ペンタスってこんなのなの」

 蘭は植物を目の高さまで持ち上げると、角度を変えるようにうかがっている。

「確かに私の家に有る物より茎も細く短いですが」

 私も覗き込むように見つめたものの、疑いの眼差しで蘭に話していた。

「でもこれ花も咲かないから、ただの雑草じゃないの? だってペンタスって暖かい時期に咲く花なんじゃないの?」

「そうですね。今の時期何度も花を実らせては散ってっと、繰り返すそうなのですが……」

 それ以上の成長を止めた植物は、蘭の広げた手のひらに治まってしまうほど小さなままだった。
 私達が考え込んでいると、昼食を済ませた先生が玄関先に訪れていた。

 
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