ミーコの願い事 始まりの章 「ペンタスとヒトデ」

一緒に咲いてくれるお花

 翌日の土曜日。この会社の就業時間は、午前中で終わる半日出勤のようだ。
 お昼間際になると、家から持参したデパートの紙袋を片手に、窓際に向かっていた。
 昨日二度も置き忘れてしまった、植物を持って帰ろうと考えていたからだ。

 そっと手を伸ばすと、植物は私を見つめ何かを訴えているように思えた。

 何かしら? 忘れて帰ったことを怒っているのかしら? それともこの場所が気に入ってしまい、離れるのを拒否しているの?

 不思議な気持ちにかられると、戸惑う自分が滑稽に思え、人目を気にするように辺りを見渡していた。
 その先に映る相沢さんは立ち上がり、ゴミ袋を広げている。
 行動の理由がわかると、いったん植物をしまうことを止め近づいて行った。

「ゴミをまとめるのね、私も段取りを覚えたいから教えてくれる」

 相沢さんは考えるように一点を見つめた後、表情を変えることなく説明をしてくれた。

「週明けの月曜日がゴミの回収日なので、今の内から準備をします。とりあえず机横のゴミ箱と」

 私は説明を受け、手伝わせてもらいながらも、気づくことがあった。
 相沢さんは袋を広げるのも、ゴミ箱を床に置く仕草も、極力音をたてないように行動をしていた。
 
 あれ、この子、見た目と随分違うじゃない。
 お化粧はしているし、真っ赤な口紅も塗っているけど、親のしつけが厳しいのかしら、立ち振る舞いが妙に優しいわ。 

 私は顔に出さないようにしていたが、彼女の内面をごまかしているような装いに、意識していた。

 一緒に机横や給湯室のゴミを回収していた私だったが、資材置き場と言われる前では、違和感を覚え手を止めてしまう。


 閉められた扉は通常のものと比べると少し小ぶりのもので、横幅も無ければ高さも頭を下げなければ入れないほどだった。

 何だか不自然な作りをしているわねー、何だか武家屋敷の隠し扉みたい。

 そんなことを思うと、室内を除きたい衝動にかられてしまう。

「ここ開けていーい」

「えっ、はい、いいですけど」

 相沢さんをは差し障りない返事を返したが、少し中緒しているようにも思える。
 私は相沢さんを横目に、その扉を開けのぞきこんだ。
 真っ暗な中、少し埃臭い印象を受けながらも、壁に設置してある室内灯のスイッチを点けた。

「私の部屋より広いじゃない」

 話しかけるように相沢さんに視線を移すと、何かに怯えるように私の腕に添えるように触れていた。
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