ミーコの願い事 始まりの章 「ペンタスとヒトデ」
「その子はどうしてこの植物を気にかけていたの?」

「それがまだその話はしていなくて、ただお花が好きな優しい子みたいなんです」

「あら、貴方と同じね。ご近所さん」

「えっ? いえ帰り道の、この植物を拾った水路横のベンチでたまたま会うだけなんですけど、住まいは確かこの辺って……」

 会話の後、先生の眉を上げた意味深の表情を見て小さな疑問を感じていた。

「そう言えば彼女のことあまり知らないし、たまたまとはいえ私に合わせたように帰宅時間が一緒です」

 それまでとは違った感情で話すと、先生はを楽しんでいるかのように話している。

「その子現実には存在しているのかしら? 京子ちゃんにしか見えなかったりして」

 悪ふざけの発言であると理解しながらも、身体の芯に寒気を感じてしまう。

「やだなー先生、違いますよー、おどかさないで下さい」

 取り乱す私に笑みを浮かべた後、掛け時計を見ていた。

「冗談よ、冗談。今お茶を入れるから一緒に飲みましょう。椅子にでも腰をかけなさい」

 話しながらも、残りの戸締りの確認をしながら給湯室に向かって行った。

 お茶が机の上に置かれると、先生は膝が触れそうな距離で椅子に座る。
 お互いがお茶を一口すすると、気にとめてたかのように、私にこんな言葉を切り出してくれた。

「京子ちゃんは、いつも明るく振舞っているけど、心配事とかあるんじゃないの?」

 思いもよらなかった言葉に、先程までとは違う表情に変えてしまう。
 内心では嬉しかった。
 でも、相談していいのか悩んでしまい、強がる姿をみせ答えていた。

「何でですかー? 私はいつも元気ですよ」

 偽りの明るさを装うと、先生は椅子から少し腰を浮かせ私の肩に軽く手をそえた。 

「ならいいんだけど。私には時折寂しげな表情を浮かべているように見えるから」

 二人しか居ないこのタイミングで、心の中の不安事を先生に打ち開けようか迷っていた。


 
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