ミーコの願い事 始まりの章 「ペンタスとヒトデ」
 以前、守さんに聞いたのですが、その中身は、社長の旦那さんである、先代社長の私物のようなものが入っているそうです。
 段ボールに触れたことがあるのですが、上部の物はとても軽く、中身が入っていないものと認識していました。

 そうだ。目に付く奇妙な品物は、同じように段ボールの中にしまえばいいんだ。

 この部屋の怪しさを軽減されると考え付くと、自己持参しました。
 背後を意識します。
 うっすら聞こえる京子さんの声や物音に安心すると、私は段ボールの中身を確認しに、恐る恐る近づきました。

 何もないと勝手に解釈していましたが、蓋を開け覗き込むと、外観の大きさに似つかわしくないほどの、少量の物が入っていました。

 中身は鉛筆で描かれた絵が数枚、それと透明なビニール袋に入れられた板が出てきました。
 絵の方は動物やチューリップが描かれ、デッサンの崩れ具合から、子供が描いたように思われます。

 社長の旦那さんが、親戚のお子さんからもらい、大事にしまったものでしょうか。
 紙全体を豪快に使い、余白を残さない描き方に、私より上手だと頬を緩めました。

 フッ。一丁前に私ったら。

 デザイン会社に勤めていることに、自分を過大評価しています。
 社長に教わり知識が少しついていますが、全然才能のないど素人であることは、自負しています。
 優しくそれを置くと、今度はビニールに包まれたものを取り出します。

 中身の板は木製で、少し泥が付いていました。
 他のものを汚さないように、包まれていることがわかりました。
 こちらも子供の執筆で、くささんたんかっと、書かれています。

「くささん、たんか」

 一体何の言葉でしょうか? 怖さを忘れ、考えてしまいます。
 私はそれらをしまうと、他のものを入れるのを諦め、部屋を出ました。


 
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