ミーコの願い事 始まりの章 「ペンタスとヒトデ」
「チンパンジーが笑っているかのように歯をむき出しにするだろう。あの表情は見た目とは逆に怯えているらしいんだ。可哀想だよな」


 動物の話をしているけど、日本を離れる話はしないの? 許さないけど言い訳しなさいよ。
 あれから私勉強したんだから、あなたが旅立つ国では、現在は内戦が始まっているじゃない。
 それなのに何で飛行機が使えるのよ。

 意味がわからないわ。

 正はそんな中、苦しむ人達の少しでも力になりたいんでしょ。
 でも危険だから、止めましょうよ。

 昔から人に言われてきた言葉、助け合って生きる。
 そんな当たり前の言葉の意味は、理解していると受け流して生きて来た。

 でも、何で私が落ち込んでいる今なのよ。

 先生のアドバイスが頭にあった私だったが、お互いが傷付かないように話し合うことも出来ずにいた。
 開き直るような気持ちは、今はただ正のことを困らせようとしている。

「ねえ、私も女性なんですから、動物の話ではなく、たまにはロマンチックな話でもしてみてよ」

 正は顔を赤らめながら、考えている。

「えっ、うん、そうだなー」

 私は困る正を横目に、遠くを眺めていた。

「……そうだ京子。ペンタスって花、知っているかな?」

 それから正は、ペンタスと言う花の話をしていた。
 どこかで聞いた名前、ペンタス。
 それがどんな花で、どんな内容だったかは理解することも無かった。
 
 ただ二人で歩くこの時間がいつまでも続けばいいと考えていた。

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