ミーコの願い事 始まりの章 「ペンタスとヒトデ」
「家の食事、若い子が好むオムライスやスパゲティとかじゃないから、がっかりしたでしょ」
用意した食事の話をしていると、そんなことは無いっと首を振っている。
贅沢な話だ、私もこの世の中のことを考えると、食べられるだけでもありがたいと、心では思っていた。
蘭は吹き出すようにクッスっと笑うと、恥ずかしそうに話し始めた。
「京子さん、私の好きな食べ物。聞いてくれます」
蘭がいつになく浸しく話すので、少し期待するように聞いていた。
豪華な食事だろうか? いや、この場合、パンケーキのような甘いものばかり食べていると話し、笑いを誘っているのだろうか?
私はどちらかと言うと、花より団子と実感しているので、話の内容に心を踊らされていた。
「あっ、この前雑誌で紹介して今有名な、クレープでしょう? それともあ洒落に甘いソースのかかった、……そうそうハヤシライス」
蘭は照れながら首を振っている。
流行に敏感なお年頃、それもお化粧をして背伸びをしている蘭のような子は、一体どんな食べ物に興味を示しているのか期待をして耳を傾けた。
「立ち食いの、コロッケ蕎麦です」
私は、ずいぶん庶民的だと感じていた。
「へーっ、揚げ物と蕎麦が好きなの? 天ぷら蕎麦でもないんだ」
蘭は友達にも恥ずかしくて言えない内容だと笑い、幼少期の話しをしてくれた。
小学生になってまもない頃、蘭の両親はお互いに愛人を作り、二歳年上の兄と蘭を残し蒸発したそうだ。
お子さんの居ない親戚にあずけられた二人だったが、現在お母さんと呼んでいる方は親戚の人で、その旦那さんも蘭が中学生の時に病気で亡くなっている。
そのころの旦那さんは普段は良い人だったが、時々お酒が入ると人が変わったかのように暴れていたそうだ。
面倒を見るのが迷惑だと言われたり、ランドセルや荷物を外に放り出しては、出て行けと暴言を言われていたらしい。
行く当てのない二人はお酒が覚めるのを、よく泣きながら外で待つ日常を送っていたそうだ。
そんな我がままを言えない状況の中、小学生だったお兄さんは、蘭を喜ばせようと空き瓶を拾いお店でお金に換えると、連れて行ってくれたのが駅前にある立ち食い蕎麦屋だった。
そこで食べた安くてお腹がふくれるコロッケ蕎麦は、二人の最高の贅沢だった。
何より安心して食べられる時間が、最高のごちそうだったっと話している。
蘭は恥ずかしい思い出ながらも、今でも給料日などになるとコロッケ蕎麦を食べ、苦しかった昔を思いだし活力に変えていると話している。
「食事も取れないことがよくあったので、今では私には全ての食べ物がごちそうです。あの時食べたコロッケ蕎麦は、本当に美味しかった」
笑顔で話し続ける蘭だったが、私は返す言葉がみつからずにいた。
この子も苦労してきたんだ。
蘭のことを知れば知るほど、いとおしく感じていた。
用意した食事の話をしていると、そんなことは無いっと首を振っている。
贅沢な話だ、私もこの世の中のことを考えると、食べられるだけでもありがたいと、心では思っていた。
蘭は吹き出すようにクッスっと笑うと、恥ずかしそうに話し始めた。
「京子さん、私の好きな食べ物。聞いてくれます」
蘭がいつになく浸しく話すので、少し期待するように聞いていた。
豪華な食事だろうか? いや、この場合、パンケーキのような甘いものばかり食べていると話し、笑いを誘っているのだろうか?
私はどちらかと言うと、花より団子と実感しているので、話の内容に心を踊らされていた。
「あっ、この前雑誌で紹介して今有名な、クレープでしょう? それともあ洒落に甘いソースのかかった、……そうそうハヤシライス」
蘭は照れながら首を振っている。
流行に敏感なお年頃、それもお化粧をして背伸びをしている蘭のような子は、一体どんな食べ物に興味を示しているのか期待をして耳を傾けた。
「立ち食いの、コロッケ蕎麦です」
私は、ずいぶん庶民的だと感じていた。
「へーっ、揚げ物と蕎麦が好きなの? 天ぷら蕎麦でもないんだ」
蘭は友達にも恥ずかしくて言えない内容だと笑い、幼少期の話しをしてくれた。
小学生になってまもない頃、蘭の両親はお互いに愛人を作り、二歳年上の兄と蘭を残し蒸発したそうだ。
お子さんの居ない親戚にあずけられた二人だったが、現在お母さんと呼んでいる方は親戚の人で、その旦那さんも蘭が中学生の時に病気で亡くなっている。
そのころの旦那さんは普段は良い人だったが、時々お酒が入ると人が変わったかのように暴れていたそうだ。
面倒を見るのが迷惑だと言われたり、ランドセルや荷物を外に放り出しては、出て行けと暴言を言われていたらしい。
行く当てのない二人はお酒が覚めるのを、よく泣きながら外で待つ日常を送っていたそうだ。
そんな我がままを言えない状況の中、小学生だったお兄さんは、蘭を喜ばせようと空き瓶を拾いお店でお金に換えると、連れて行ってくれたのが駅前にある立ち食い蕎麦屋だった。
そこで食べた安くてお腹がふくれるコロッケ蕎麦は、二人の最高の贅沢だった。
何より安心して食べられる時間が、最高のごちそうだったっと話している。
蘭は恥ずかしい思い出ながらも、今でも給料日などになるとコロッケ蕎麦を食べ、苦しかった昔を思いだし活力に変えていると話している。
「食事も取れないことがよくあったので、今では私には全ての食べ物がごちそうです。あの時食べたコロッケ蕎麦は、本当に美味しかった」
笑顔で話し続ける蘭だったが、私は返す言葉がみつからずにいた。
この子も苦労してきたんだ。
蘭のことを知れば知るほど、いとおしく感じていた。