ミーコの願い事 始まりの章 「ペンタスとヒトデ」

追い打ち

「さあ、これからどうしよう」

 ソファーに寝転び天井を見つめながら、今後のシナリオを考える。
 必死になって仕事を下さいと駆け回わっても、今の状態でムリよね。
 数年後、数年後なら復活するチャンスが有るかも、その方がドラマチィクだし注目もされる。


 これから私も更に芸術の感性を磨き、数年後に何らかのコンテストに応募すれば復活できるかも、イヤ、私ならやれるはず。
 それまで、仕事が無いことを考えると経済的にマンションの家賃は苦しいわ。

「しょうがない実家に戻るか」

 今は何が安全で何が失敗しないかを考え、身の回りの整理することにした。
 
 実家は、東京の郊外に分類される県境にある。
 高層ビルが立ち並ぶ現在の住まいに比べると、田舎町のようだった。


 母家は小さな木造むき出しの二階建てで、近くを走る電車も、おもちゃみたいに三両編成で奇妙な形をしていた。
 そう、正面から見ると台形の角を丸くしたような形だ。


 住宅や会社、小さな工場が入り混じる街並の近くには、高級住宅地と言われている場所もあるけど、子供の頃からそことは無縁な下町であると認識していた。


 父は私が二十三歳のときに亡くなり、今は母が一人で暮らしている。
 私が帰ることで母も喜ぶに違い無い。色々迷惑をかけたから親孝行。まあ、それも悪くないか。

 数日後賃貸マンションを離れ私は実家に戻っていた。

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