その祠の×には、××が××っ×いる
ちら、と。手元から背後へ視線を流せば、おじさんかお爺さんか、どちらの方が適切な呼び方か曖昧な男性が立っていた。
たぶん、50代前半か後半くらい、なのだと思う。
声音はどちらかと言えば柔らかい印象だけれど、わたしを見つめる目はその声からは想像もつかないほど暗く淀んでいる。
鎌のように弓形に曲がった目、白が多くを占める短く結った髪。壊れかけの扇風機に似たしゃがれ声。黒子が目立つ青白い肌。
どれをとっても、およそ実年齢とはかけ離れたものに思えるけれど、この人は確実に、まだ50代だ。
口調はわざと年寄りに寄せているのだろうけれど、滲み出る所作は、お爺さんと呼ばれる年齢の人のものではまだない。
「そうです、あなたですよ、見知らぬお嬢さん」
「……見知らぬあなたは、この村の方ですか?」
「ええ、僭越ながらこの村の村長をさせてもらっています」