その祠の×には、××が××っ×いる
「………どうして、それを知っているのですか?」
表情は、愛想笑いは、揺らがなかった。
ただ。ただひたすらに、不可思議なだけで。
見られてなどいないはずだった。視線も感じたりしなかった。
もちろん、カメラなんかの機械も、見渡す限りなかったし、念入りに確認もした。
……それなのに、なぜこの人間は、わたしが祠をこわしたのだと、知っているのだろう。
……いや、もしくは、そうではないのか。
「祠って、あの古ぼけて痛んだ小さなお社のことですよね?変な石碑が入った」
「……まさかこわした挙句、嫌味まで言うとは。これだから現代の子は、奇妙な噂になど流されおって……」
「ああ、だからわたしが壊したなんて言い出したんですね」
この時、ようやく合点がいった。
なぜこの人がわたしが祠を壊したなんて決めつけたのか。
あの祠は確かにわたしが倒した。だけれど、傷はほとんどついていなかったし、直す時にそれほど乱暴に扱いもしなかったから真新しい傷も、ましてや破壊してなどいないのだ。