奏くんはきらきら




 ボーリング店は新しいきれいな建物で、入口の方にドリンクバーが付いていた。

 ひとつのレーンで遊ぶには人数が多かったのでひなた達は2チームに別れた。

 ひなたは奏と冴と同じチームだった。

 奏は並んだ後ろの棚からボールを取ると、レーンに向かってボールを投げ始めた。

 コロコロとボールが転がっていくのを見ながら、ひなたは呟いた。



「またストライク。」

「奏くんボーリングうまいね。」

「かんでなんとなくね。でも上手い人多いよ」



 続いて冴がボールを投げる。

 ボールは逸れて、一本ピンを残して機械の中に吸い込まれていった。


「こういう時、青春を感じるなあ」


 冴が言った。



「確かに」

「ひなたは好きな人居ないんだから青春なんてしてないでしょ。」

「居ないんだ、西井さん。」



 コーラを飲みながら自分の方を見た奏に、ひなたは頷いて言った。



「漫画の中になら居るけど」

「西井さん、漫画の話ばっかり。」

「最近は奏くんに似てるライバルの……も推してるんだ」



 冴がプッと吹き出した。


「似てないよ。」


 冴が言った。


「似てるよ。」


 ひなたが言った。



「いや、いい意味で似てないよ。そっか茶髪だし癖っ毛だからか。ひなたにはそう見えるの?」

「うーん、そうとしか見えない。」

「負けキャラなんだって。失礼でしょ、僕に。」

「ねえじゃあ好きな人じゃなくて、好きなタイプはないの?」



 別の友達の言葉に、ひなたは首を傾げた。



「タイプ……?」

「そう、タイプ。」



 ひなたは考えてから言った。



「うーん。頼りがいがあって優しい人かなあ。」

「ふーん」



 奏が頷いた。

 冴が聞いた。



「奏くんあてはまってる?」

「僕?。どうだろ。」



 ひなたが言った。



「奏くんは少女漫画のライバルキャラだから、結構当てはまる。顔はきれいだし頼りがいはあるし優しいよ。」

「ライバルキャラなんだ」

「誰がライバルキャラだ、誰が。まったく。」



 奏は飲み物に一口口をつけた。
 それから言った。



「結構あてはまるなら、西井さん僕と付き合ってよ。試しに。」

「良いよ。」



 そう答えてひなたは笑った。






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