奏くんはきらきら
お昼休み、ひなたと奏は2人でこっそり屋上に行った。
階段を登ってひなたが鍵穴に鍵をさすと、奏が人差し指を口に当てポーズをした。
屋上に出た2人はゆっくり静かに戸を閉めた。
「開放感。いいねえこの空気」
屋上の塀に凭れて、ひなたが言った。
今日は快晴で、青空が広がり、心地よい風があたりを吹き渡っていく。
「西井さんがワルだから、僕までワルになってきちゃったじゃないか。」
背中で塀に寄りかかって、奏が言った。
「ちょいワル位が丁度いいよ」
「まあね。そう思うけど。」
「本当に誰も居ないと爽やかだね。」
「上から眺める景色きれいだしね。僕たちだけしか入れないから。」
奏がふと、ひなたを見て何でもない事を呟くみたいに聞いた。
「ねえ、僕たち付き合ってるみたいに言われない?」
ひなたは首を傾げた。
奏が続けた。
「そういう風に見られるのは、そう見られる様に僕が振る舞ってるからだって思わない?。」
自分を見下ろした奏に、ひなたは実はドキっとした。
整った顔。ハキハキした喋り方。よく通る声。
「僕が好きって言ったら?。」
奏が聞いた。
「言っとくけど、僕は好きじゃない女の子と昼休み話したりしないし、その子が居ない時にわざわざ友達同士の集まりに顔を出したりもしない。楽しくないし、そんなことしたって。……西井さん?」
ひなたは、咄嗟に他に用事があるフリをしていた。
「そういや、冴ちゃんからジュース代返して貰ってない。120円。」
「……。」
「あのジュースは正解だった。一口貰ったんだ。牛乳入ってたけど。」
奏はちょっと苛立った声で言った。
「……こういう時僕ははっきり言う事にしてる。そうしないと分かる奴と分からない奴居るし。普通に考えて。何が言いたいか分かる?」
怒り笑いで。ちょっと悔しそうに。
「はぐらかさないでよね。」