Tageliet──永遠の秘薬──
「何もかも知っています。お父様がお母様に何をしたのか、これから何をしようとしているのか。お願いです。もうこれ以上、この国の民を苦しめないで!」

 国家は衰退し、民の多くは餓死寸前。なのに貴族ばかりが潤い私服を肥やしている。傾きかけた国の財政には目もくれず、ヴァンパイア狩りに執念を燃やす国王に、母もきっと黙ってはいられなかったのだ。

「不老不死など手に入れて何になるの!? かつて略奪から手に入れたその玉座を守るため? 貧困に喘ぐ民を見捨てて王の肩書きを死守したところで、民がいなくては国家は成立しない!! どうか目を冷ましてください────お父様!!」

 格子ガラスの窓から外の景色を眺めている父の姿に、イザベラは必死に訴えかける。

 争いなどしたくない、どうか穏便に事が済めばよいと⋯⋯。

 しかし目の前にいる一国の王は、欲のために母を殺し、実の娘の命をも弄んだ。

 その事実はどうあっても消せはしない。

 少しの恐怖にさえ、身体は過剰反応する。けれど、今さら引き返すわけにはいかなかった。
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