Tageliet──永遠の秘薬──
 そんな彼の言葉が合図だったかのように、ギルベルトは途端に崩れ落ちる。大地に蹲り、たちまち痛みにもがき苦しみ始めたのだ。断末魔の叫び声が森全体に響き渡る。いまさら気づいたところで、全てはもう手遅れだった。

 その光景を静かに⋯⋯そして冷静に見下ろしているクラウスが、ギルベルトの前にその剣先を向ける。

「お前が選べ。『死』か、自我を忘れた化け物への変異か」

 するとギルベルトは彼のローブの裾をつかみ、苦痛に耐えながら答えた────「殺してくれ」と。

 縋るような彼の言葉にクラウスはせめてもの情けだと、すでに息耐えた国王の血を自分の剣に塗りつける。そしてそれをそのまま勢いよく振りかざすと、その首を瞬時に切り落とした。

────あっという間の幕切れ。

 途端に力尽きたように地に崩れ去るクラウスに、何事かと二人が駆け寄る。見遣れば、直ぐ様自然治癒されるはずの彼の肩の傷がまだ癒えていなかった。

「クラウス!! ちょっ⋯⋯どういうこと!? ねぇ、答えて!!」

 何度も何度も呼びかける。

 しかしどんなにその名を呼ぼうとも、クラウスの意識はそのまま戻らなかった。
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