Tageliet──永遠の秘薬──
❁.




「本当にいいのか?」

 国境の近くでヴィクトールは、誰かに何かを確認していた。

「あぁ」と短く答える青年に大きなため息をこぼし「本当に?」と再度窺う。

 聞かれた青年は漆黒の髪をかきあげ、「お前もしつこい」と、さも鬱陶しそうに答えていた。

「お前の死を偽装してやったんだ! 感謝しろよ。こっちは罪悪感でいっぱいだっていうのに、銀髪が黒髪になったくらいで落ち込むなよ。おい、聞いてんのか? クラウス!!」

 ヴィクトールの話を最後まで聞かずにさっさと歩き出す青年────クラウス・リーフェンシュタール。

 そう、彼は生きていたのだ。

 確かに死人の血を浴び生死の境をさ迷いはしたが、これもやはり『血清』のなせる技か、はたまた純血種の強みなのか? 死ぬまでには至らなかった。
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