Tageliet──永遠の秘薬──
「確かに、僕自身はこの国の人間じゃない。だけど先祖がアイゼンシュタットからの亡命者なんだ。僕はただ、自分のルーツが知りたいだけ⋯⋯」

 だからこの国にやって来たと、青年はそう語った。

 先祖がアイゼンシュタットの人間だと聞いた瞬間、今まで感情の起伏を全く見せなかった彼の表情に僅かながらも変化が窺えたのだ。

「僕はヴィクトール。あんたは?」そう聞かれ、彼は静かに答えた。

「⋯⋯クラウス。────クラウス・リーフェンシュタール」

 ゆっくりと、静かに紡がれた言葉。

 それは、四百年振りに口にした彼自身の名だった。

「クラウス⋯⋯?」

 反復するように彼────ヴィクトールはその名を噛み締める。

 彼は驚愕していた。

 その目を見開き彼────クラウスにすがるよう、自分から逸らされた視線を引き戻す。
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