Tageliet──永遠の秘薬──
 それはヴァンパイア一族の科学者が、薬師の魔女の力を借りて作り上げた叡智の結晶。血への渇望を抑制する、まさに『奇跡の妙薬』だった。

 まさかそれが、後に新たな火種を生むことになってしまう『呪われた薬』になろうとは、その時は誰も考えてはいなかった。

 今に通ずる悲劇の全ては、その『秘薬』から始まっていたのだ。

 クラウスは今まで思い出すことすら避けていた遠い過去の記憶を、ヴィクトールに伝える決心をした。何より彼には、知る権利があるのだから。

「共存とは言っても、我々と人が入り交じり仲良くというわけにはいかない。だからこの森を我々一族の土地として王から譲り受けたものとし、誰も立ち入ることのない聖域とさせてもらった」

 そうして何事もなく時は過ぎて行く。

 しかし、ヴィンフリート王の治世でその安寧にヒビが入り始めたのだ。その起因となったのが、血を欲しない彼らヴァンパイアの秘密。それに興味を抱き探り始めた男がいたのだと。

 それが、当時ヴィンフリート王の宰相として側近についていたゲオルクだった。
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