Tageliet──永遠の秘薬──
「何も覚えてねぇんだろ? 本当なのか?」

「あの日の夜、城を抜け出したことは覚えてる。だけどそれ以外のことは、何も⋯⋯。『彼』の城で目覚めるまでのことは、何一つ覚えてないの」

 ふとライナーが眉を寄せる。イザベラの言った「『彼』の城」という一言に引っ掛かったのだ。

「ねぇ、ライナー⋯⋯あなたは私の味方よね? それとも国王に忠実?」

「俺はいつだってイザベラの味方だ。もちろん国王に恩義は感じてる。けどな、お前は俺の大事な家族だ。血は水よりも濃いっていうが、血の繋がりだけが家族の証じゃない。どのくらい大切かってことの方が、俺にとっては重要なことだよ」

 血の通った言葉だ。その人柄溢れる温かい思いに頬が緩む。本人は隠しているつもりだが、ダダ漏れなその実直さと熱血漢は折り紙つき。外見も中身も男前な彼に、ほのかな恋心を抱いていた頃もあったなと、そんなに昔ではない記憶を遡っていた。
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