Tageliet──永遠の秘薬──
 ここ二、三日降り続いていた雪が止み、空は何日ぶりかの青を湛えている。見上げた蒼穹は雲ひとつなく、降り注ぐ陽の光を有難く感じながらその場に腰を下ろしたイザベラは母の墓前に手を合わせた。

「お母様⋯⋯。お母様の言ってたことは本当だった。あの森に『悪魔』なんていなかった。『闇の森』が示すその本来の意味は『彼』を守るため……」

 あの闇も、静寂も、全てはその存在を守り隠すためにあるのだと。

 この世にたった独り生きる孤高のヴァンパイア────。

「クラウス・リーフェンシュタール⋯⋯⋯⋯私は伝説に出会ったの。ライナー、私は確かに⋯⋯ヴァンパイアに会った」

 立ち上がり目が合った彼にそう告げる。ライナーは目を見開いたまま固まっていた。
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